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編集部員OG

サカネ

タカオネが開業したら、高尾山はどんな街になるんだろう(前編)

2021年7月、高尾山口駅前に誕生する体験型ホテル「タカオネ」。タカオネはただ泊まるだけではない、高尾山エリアをフィールドとしたアクティビティの拠点になる宿泊施設を目指しています。

一般的なホテルではなく、なぜ「体験型ホテル」をつくることになったのか。そして、タカオネができることで高尾山は今後どのように変化していくのか。タカオネプロジェクトのメンバーに、建築と街づくりの観点から語ってもらいました。

対談メンバーのご紹介

設計のオカタ

海法圭建築設計事務所
代表 海法圭

東京をベースに活動する建築家。2010年に海法圭建築設計事務所を設立。東京理科大学、東京電機大学、芝浦工業大学等で非常勤講師を勤める。ヴェネツィア・ビエンナーレ2021に招待出展予定。タカオネプロジェクトでは設計を担当。

【主なプロジェクト】

  • 日本橋馬喰町にある昆虫食レストラン兼ラボ「ANTCICADA」の設計
  • JR新潟駅直結の複合型シェアスペース「MOYORe:」の設計
  • 書店機能付きライフスタイルホテル「箱根本箱」の設計

設計の他、渋谷PARCOのGAKUにて、まちの遊びをテーマに10代向けのクリエイティブ教育プログラム「Town Play Studies」を開催。

 

企画のオカタ

株式会社アワーカンパニー
代表取締役社長 倉富宗一郎

2013年にアワーカンパニーを設立。企画・クリエイティブディレクション、およびコピーライティングを担当。タカオネプロジェクトでは総合企画監理として、コンセプト・企画・デザイン・運営などをひとつのストーリーとして編纂することを担当している。

【主なプロジェクト】

  • アトレ竹芝内 劇場型コミュニティスペース「SHAKOBA」の総合企画・デザイン
  • 浅草九倶楽部/浅草九劇の企画・クリエイティブディレクションなど
  • 福井県立恐竜博物館 ミュージアムショップ・カフェの企画・デザイン

高尾山は他ではあまり見ないユニークな観光地

編集部

ジュウカワ

最初に「高尾山口駅前にホテルをつくる」って聞いた時、お二人はどんな感想を持たれましたか?

企画のオカタ

倉富さん

実は今回のプロジェクトに関わることになって初めて高尾山に行ったんです。朝着いて、山に登り、お蕎麦を食べ、お風呂に入りました。とても楽しかったのですが、「泊まるほどはやることがない」というのが正直な感想でした。でも、やはり泊まってもらうことに挑戦しなければ高尾の可能性は広がらないので、どうすれば泊まりたくなるのか悩みました。

編集部

ジュウカワ

どういう切り口で考えていったのですか?

企画のオカタ

倉富さん

単に快適な朝を迎えられるだけではなく、「朝も昼も夜も、そして早朝も」感動に出会える体験を大切にしたい。高尾山には、本当はいろんな時間で楽しめるコンテンツがあって、一般的なホテルのように「何時にチェックイン、何時にチェックアウト」っていう枠に縛られる泊まり方はしっくりきません。1泊2日の旅の時間を、ちょっと休んだり、準備をしたり、自由に使えることを「泊まる」と呼ぶようになるのでは……?など考えてました。

設計のオカタ

海法さん

泊まるイメージが希薄な土地だったからこそ、いままでホテルらしいホテルがほとんどなかったわけですが、そこに今の高尾山らしさがあると思います。どこにでもありそうないわゆる観光地にならなかった。大勢の観光客が来る場所でありながら、駅周辺にも生活感が残っている。お店を営んでいる方々もあの土地に根ざして山と共に生きている印象があるんです。

編集部

スエマツ

なるほど!言われてみるとそんな気がします。

設計のオカタ

海法さん

山という観光資源がありながら、ツーリズムに回収されていない場所って今の時代において貴重じゃないですか。高尾山を、これからの新しい観光や宿泊のあり方を考えていく舞台にしていきたいですね。

企画のオカタ

倉富さん

確かに、メジャーな観光地でありながら泊まるところがほぼないってレアかもですね。じゃあなんで泊まらないんだろう?って考えると、高尾山って「山に登る」という一つの目的しかないように思われている。一つの目的しかない場所って目的を果たすとすぐ帰っちゃいますよね。

編集部

ジュウカワ

そうですね。今だと大半のお客様が下山後、夕方までには帰ってしまってます。

企画のオカタ

倉富さん

例えば、温泉地に行くと、メインの目的は温泉に浸かることだけど、お宿はもちろん、食事したり、浴衣を着て湯巡りしたり、土産屋を眺めたり。「温泉に行く」というワードから色んな遊びが想起されて、目的がたくさんあるように感じる。

編集部

スエマツ

そういう場所だと泊まってじっくり楽しみたくなりますね。

企画のオカタ

倉富さん

そうなんですよ。高尾山にもいろんなコンテンツはあるんですが、「山に登る」ことの印象が強すぎて、他の遊びが目的になるところまで至っていない。「高尾山に行く」と言ったときにたくさんの目的がイメージできるよう、いろんな遊び方を発掘し、印象づけ、泊まる動機をつくっていく必要があるんです。

設計のオカタ

海法さん

高尾山の場合、高尾駅や八王子駅を中心に広がる街が隣接しているところも面白い点です。街が発展をしやすい平地があったからこそ、山の近くである高尾山エリアは独自の発展を遂げた印象です。タカオのカタヲでも高尾駅の方によく行っていますが、山と街どちらもあるからこその楽しみや目的をつくっていけそうな気がします。

タカオのカタヲの取材でもよく行く高尾駅

編集部が高尾駅に遊びにいった日の記事はこちら

消費するホテルではなく、生産するホテルへ

設計のオカタ

海法さん

高尾の街があって、その先に高尾山口駅があり、高尾山がある。街と山との結節点にあるのがタカオネで、そこから山小屋のイメージが浮かびました。山小屋って、自分たちがそこで過ごすために薪を割ったり、滞在する人も山小屋での生活に入り込んでいくじゃないですか。その切実さや素直さが良いですよね。だからタカオネも、運営者含めそこにいる人たちが自然と何かを生み出し、生活を営んでいるような場になると良いなと考えました。

企画のオカタ

倉富さん

建築コンセプトの中に、「消費するホテルではなく、生産するホテル」という言葉がありましたね。まさにそうなんです。タカオネでは「体験」を大切にしているけど、それは「コト消費」というのともまた違います。今ここで自分が素敵な時間を過ごすために、自分で必要なモノやコトをつくっていくという生産の視点があることが重要です。

設計のオカタ

海法さん

例えば自分で火を起こしたり、薪を焚べたり、アウトドアのアクティビティって本質的にそういう能動性や主体性を抱えていますよね。お金を払って受動的にサービスを受けるのとは違う楽しさがある。

企画のオカタ

倉富さん

以前、タカオネならではのホスピタリティについて議論したことがありましたよね。いたれりつくせりのサービスの提供ではなく、「自分でやってみる機会」を応援することだ!という想いに至りました。なんでも0から自分でやらなければいけないキャンプとかだと、初心者にはハードルが高すぎる。

編集部

ジュウカワ

そう、キャンプはかなり手がかかるイメージがあるんですよ。

企画のオカタ

倉富さん

枠組みやサポートは用意しつつ、一人ひとりが自分で挑戦できる機会をつくっていく。それが、アウトドア上級者だけでなく、幅広い人が訪れる高尾山だからこそ目指すべきホスピタリティだ!って。訪れた人が、それぞれ自分ならではの楽しみを見つけてほしいですね。

設計のオカタ

海法さん

人によってなにを楽しみと捉えるかって違いますもんね。例えば、高尾山に来たけど山には登らないで過ごす、っていう選択肢もある。タカオネの中庭で焚き火を楽しんだり、部屋の中で木々を眺めながらのんびり過ごしたり。サービスをただ受けるのではなく、自分自身で過ごす時間をつくっていくホテルだからこその贅沢ですよね。

編集部

スエマツさん

これまでの世の中って、消費の方が価値が高くて、その対価としてお金を払ってましたけど、生産することに対してお金を払うという流れも徐々にできている。タカオネでもそういう価値を提供していきたいです。

タカオネができることで、高尾山が「行きつけの山」になっていく

企画のオカタ

倉富さん

タカオネができることで高尾山での過ごし方の選択肢が増えるという話がありましたが、一番変わることは「山を下りた後」なのかなと。例えばタカオネのレストランで下山後にお酒を楽しんだり、中庭で焚き火を囲んでみたり。

編集部

ジュウカワ

そうですね、夕方から夜にかけての過ごし方はだいぶ変わりそうですね。

企画のオカタ

倉富さん

それだけじゃなく、高尾山に泊まるから、そこを起点にして次の日は隣の山に出かけてみよう!ってこともできそうですよね。行きだけじゃなくて登山のその後をつくる結節点となり、高尾山エリアでの過ごし方を増やすことがタカオネの役割なんです。

設計のオカタ

海法さん

高尾山経由の山巡り、楽しそうですね。タカオネができることで、「日帰り登山」のイメージから「1泊して楽しむ場所」になって、そこから更に泊数が延びていったらまた違う変化があるんじゃないでしょうか。別荘地のような使われ方をしたり、企業と契約してワーケーションの拠点として使ってもらうというのも良さそうですね。

編集部

スエマツ

なるほどなぁ。タカオネができることで、京王線にはどういう影響がありそうですか?

編集部

ジュウカワ

高尾山口駅からの上り電車のピークって、今だと14〜15時なんですよ。朝来て、夕方前にはみんな帰路についちゃうんですよね。でも、タカオネができて過ごす時間の幅が広がったら、夜の時間に新宿から高尾山口駅に向かう電車が仕事帰りの人以外で賑わっている、ということも起こりそう。

企画のオカタ

倉富さん

電車もそうですが、いろんな人の日常に高尾山をもっと入れていきたいですね。通勤とかの日常の中で、いつも高尾山にちょこっとでも触れる。そうすることで休みの日にレジャーとして行く高尾山ではなく、金曜日の夜にふらっと高尾山に飲みに行く人も出てくるのでは?

編集部

スエマツ

いつも頭の片隅に高尾山の存在があるっていうのがいいですよね。

編集部

ジュウカワ

昔グループ会社のリビタに出向していた際、横浜みなとみらいでBUKATSUDOっていう「大人の部活」がテーマのシェアスペースを立ち上げたことがあって。ずっと関わっていたからスタッフさんも利用者さんも顔なじみがたくさんいて、フラって行くと必ず誰かしらに会えるんですよ。

BUKATSUDO
横浜・みなとみらいの造船ドック跡地に誕生した、「大人の部活」が生まれるこれからの街のシェアスペース

住所
〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい2丁目2−1

HP
https://bukatsu-do.jp/

編集部

スエマツ

そういうのいい!楽しいですよね!

編集部

ジュウカワ

そうそう。だからなんとなく「横浜の近くに行ったらBUKATSUDOに行くか」っていう意識がありますね。BUKATSUDOっていう場所に行くというよりは、そこにいる人に会いに行っている感覚なんです。場の持つ力って、建築の魅力、地域の魅力っていうのも大きいと思うけど、やっぱり一番大きいのは人の魅力だと思うんですよ。タカオネに行けば誰かに会えるっていう状況をつくっていきたいですね。

企画のオカタ

倉富さん

なるほど。タカオネができることで、高尾山が行きつけの店ならぬ「行きつけの山」になっていくんでしょうね。常連さんができていくというか。いつもその場所のことが頭にあって、近くに行く用事があったらフラッと寄っちゃうのが常連さん。高尾山のことをそういう風に思ってくれる人を増やしていきたいですね。

設計のオカタ

海法さん

高尾山に来る人は山が好き、高尾山が好きっていう共通の「好き」のもと集まっている。映画館のホワイエで、上映前にそわそわしたり、上映後にほころんだりしている人たちの空気感。そんな空気感がタカオネで生まれれば、初めて会った人でも繋がっていける可能性を秘めていそうです。

企画のオカタ

倉富さん

繋がるって言ってもそれを強制されるのではなく、ゆるっと空間や出来事を共有するようなほどよさが大事。そこからもう一歩踏み込みたいとき、タカオネのスタッフが人と人とを繋ぐ役割を担う必要があるんでしょうね。

編集部

スエマツ

責任重大だ…!タカオネは泊まる人だけじゃなくて、ちょっと遊びに来た人や高尾で暮らしている人も交わる、街に開かれた場所にしていきたいです。

タカオネ対談はまだまだ続く…!後編記事ではホテルの設計・デザインから、タカオネができたその後の展望についてもお伝えします。

後編記事はこちら

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高尾山口駅から
徒歩1
タカオネ

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